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大阪高等裁判所 昭和56年(行ス)7号 決定 1981年4月08日

抗告人

金満

右代理人

渡辺哲司

田崎信幸

相手方

大阪入国管理事務所主任審査官

中市二一

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告人は、「原決定を取消す。本件執行停止決定取消申立を却下する。申立費用は相手方の負担とする」との裁判を求めたが、その理由は、別紙記載のとおりである。

よつて案ずるに、大阪地方裁判所昭和五六年(行ク)第四号事件記録及びその本案たる同庁昭和五二年(行ウ)第三三号事件記録によれば、抗告人は「昭和二七年法律第一二六号該当者である抗告人には出入国管理令の適用がないから、抗告人が同令二四条四号リに該当するとした法務大臣の裁決及び相手方の抗告人に対する退去強制令書発付処分は違法であり、また、法務大臣が抗告人に在留特別許可を与えなかつたことについては裁量権の逸脱ないし濫用の違法があり、これをうけてなされた相手方の抗告人に対する退去強制令書発付処分も違法であるから、取消されるべきである」旨を主張して大阪地方裁判所に対し退去強制令書発付処分取消訴訟を提起し、かつ当該退去強制令書に基づく執行の停止を申立てたところ、同裁判所は同庁昭和五二年(行ク)第一〇号執行停止申立事件として審理した結果、昭和五二年五月一九日に「相手方が抗告人に対して発付した昭和五二年三月二三日付退去強制令書に基づく執行は、その送還の部分に限り、本案訴訟たる右退去強制令書発付処分取消請求事件の判決が確定するまで、停止する」旨の決定(以下、本件執行停止決定という)をしたこと、及び右本案事件につき、三年有余の審理の結果、昭和五六年一月一六日に「抗告人の請求を棄却する」旨の判決の言渡があつたことを認め得る。相手方は、「右判決言渡の事実は行訴法二六条一項にいう『事情の変更』にあたる」旨を主張して、本件執行停止決定の取消申立をしたところ、原裁判所は右申立を理由ありとして認容したが、当裁判所も次の理由により右申立は理由判旨があると判断する。即ち、前記本案訴訟が係属した原裁判所は、本件執行停止決定をなした際、「本案につき理由がないとみえるとき」にはあたらないと判断し、行訴法二五条二項本文、三項により、当該決定をなしたものであるところ、審理の結果、本案につき理由がないと判断するに至つたのであるから、本件執行停止決定は、原裁判所として爾後維持すべき理由を失つたというべく、その事態は、まさに行訴法二六条一項にいう「執行停止決定の確定後に事情が変更したとき」にあたるといわなければならない。

(なお、本件執行停止決定取消申立事件においては、前記判決言渡の事実が行訴法二六条一項にいう「事情の変更」にあたるか否かを判断すれば足るのであり、同法二五条所定の要件の有無は、前記本案事件につき控訴の提起があつた場合に、その受訴裁判所が、本件執行停止決定の取消を受けた抗告人から改めて執行停止の申立を受けた際に判断すれば足るのであつて、原裁判所ないし当裁判所において判断すべき性質のものではない)。

そうすると、相手方の前記取消申立を認容して本件執行停止決定の取消をした原決定は相当であつて、本件抗告は理由がないから、これを棄却し、行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(小西勝 坂上弘 大須賀欣一)

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